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前編



東京―ハチ公前

ここはいつも人が賑わっていた
そしてそこで一際目立つ二人の男がいた

1人はボサボサの髪にワイシャツをラフに着こなす青年

もう1人は長髪に緑色の瞳を持つ青年

ボサボサ髪の男が声を上げる―

『家の鍵、財布、その他無くし物。
なんでも私達、探し屋にお任せください!
どんなものでも私達が必ず探して差し上げます!
家の鍵、財布――』

もう1人の男はというとやる気の無さそうに隣りで欠伸をする

「おい、“良”!
欠伸なんかしてないでお前も声を出せよな」

「い・や・だ・ね。
そんな声を上げるなんてみっともない。
そんなことしなくても俺が手本を見せてやるよ」

そう言い良と呼ばれた青年が辺りを見渡すと1人の女性に目をつける

「ねぇキミ、可愛いね。
何か無くし物で困ってない?
誠心誠意を持って探して見せるからさ……。
もちろん、それ以外のケアも……」

仕事をすると言うよりもナンパをしているという感じである

「たくっ!また始めやがった」
それでも止めようとはしない
なぜならこの方法で、結構客が出来るからだ

――と、ボサボサ髪の男の携帯が鳴る
「はい、もしもし沢木ですが?」

<探し屋か?依頼をしたいんだが……>


「ね、どう?何か探し物あるでしょ?」
「おう、良。仕事だ」

まだ女性を口説いていた良に沢木が話を持ちかける

「もうちょっと待てよ、彼女も仕事を依頼したがってるから、ねぇ?」

「……いいから来い!」

良を強引に連れ出し車に向かう

「せめて、電話番号だけでも聞かせてくれよなぁ〜」
「ダメだ、今回の依頼はMだ―」

その一言に良の顔が真剣になる
先程まで冗談めいていた様子が嘘のように



車に乗り込むと早速良が口を開く
「で、細かい内容は?」
「ああ、赤城コーポレーションって会社の令嬢が昨日行方不明になったんだと。
で、今朝方無事に見つかったんだが……」

「“記憶”がなかった、と?」
「そう言う事だ。
とりあえず、外傷は見当らなかったらしいんだがレイプの可能性もある。
もしそうなれば会社にとっては大幅なイメージダウンだからな」
「ふぅん……まぁ難しい事は“明”に任すとしてギャラはどうなのさ?」

再び良の顔がにやける

「たくっ、お前も少しは頭使ってくれよ……。
報酬は300だとよ」

「流石に令嬢ともなると違うねぇ桁が♪」

「さ、そろそろ令嬢の御自宅に到着だ」


そう言うと先程から壁続きだった所に門が見える

「うは〜、この壁全部この家の壁だったのかよ。
俺達の家の何倍あるんだ?」
「……比べれるもんじゃねぇだろ」

明と良は現在二人で2LKのアパートに住んでいた
決して仕事の稼ぎが少ない訳ではないのだが―



明がインターホンを押す
<ハイ、どなたでしょうか?>
「……先程依頼を受けた探し屋の沢木と小林です」
<少々お待ちください……>



暫くして大きな扉が開くと一人のガタイの良い男が現われ二人を誘導する

(脇が膨らんでいる?銃か……、
やっぱどう考えても普通じゃ無さそうだなぁ)
明はその男を後ろから観察し少しでも情報を仕入れる

それに比べて良は周りを見回し『すげぇ』とただ感嘆していた

やがて一つの部屋に二人は案内される
その部屋には大きなテーブルが一つあり、反対側に1人の初老の男性が座っていた

「よく来て下された、探し屋殿。
おい、はるかを連れてまいれ」

初老の男性が男に命令するとその男は外へ出ていった

「……と、自己紹介がまだでしたな。
私の名前は赤城健文、赤城コーポレーションの会長だ」

「……一つ聞いてもいいですか?
何故、赤城コーポレーションなどという大企業がわざわざ私達なんかに依頼を?
他にあてはいくらでもあるでしょうに……」

「(明、客が逃げるような事言うなよな!)」

良が明に小声で話し掛ける

「……依頼内容からある程度の察しは付いていると思うがね」

赤城は明の眼を見てそう答えた
この男の観察力を既にある程度見抜いているかのように……

「依頼内容は娘さんの記憶を探す事、そして記憶が無くなったのが行方不明になった一夜。
つまり出来るだけ外部に漏れたくない事態が起こったと考えるのが普通
そう言うことですね?」

わざと明は赤木に向かって言う

「・・・・・・そう言う事だ。
おそらくは会社に対して恨みがあるものか、個人的な恨みか……。周りにいる人間も信用がきかない状態だ」

「もしかしたらその原因が私達かも知れませんよ?」

さらに明は突っかかる

「二人の噂は色々聞いている。
どれもこれも裏の情報ばかりだがね―
信頼だけはおける様なので依頼した。
これでは不満かね?」

ここで初めて明が本題に入る

「なるほど、既にこちらの事もじっくり調べてある様子。
本題に入りましょうか……何か少しでも手掛かりとかは無いんですか?」
「ウム……」

と、ここで1人の女性が部屋に入ってくる
長い黒髪の美しい女性だ
しかしその女性の眼はどこか虚ろで焦点が定まっていなかった
明と良は暫くの間その女性に魅入った

「紹介しよう、娘のはるかだ」

赤城が短めにはるかを紹介する

「手掛かりははるかが帰って来た時に持っていたこの紙切れだ」

そう言い赤城が明にその紙を渡す
その紙には特別何か書いてある訳でもなくただ本当に真っ白な紙だった

明はそれを良に渡す
すると良はその紙をじっと見つめたまま動こうとしない―

「(なるほど、これが噂に聞いた彼らの“能力”というわけか)」

「ふぅ―」
「どうだ、何が“見えた”?」
「……紅い髪の男とこのお嬢さん、そして何かの契約書―」

「契約書か……となるとこの会社を乗っ取ろうとする奴の線が濃くなったか」

「とりあえず、悪戯はされてないみたいだね」
良はそれだけ言って紙を赤城に返す

「紅い髪の男……心当たりが一つだけある。
私の会社の幹部に最近ずっと一緒にいる男の髪が紅い髪をしていた」

「ほんじゃぁ、そいつの名前と場所を教えて頂きましょうか」
「紅い髪の男の名前は覚えていないが幹部の名は“観月”だ。信用の置ける奴だと思っていたのに……。
今は多分横浜の港で新建設の現場を見に行っているはずだ」

「じゃ、早速いくか良」
「うん、さっさと片付けてこよ!」

相手の場所を聞くとすぐさま二人は部屋を後にした



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